「人工甘味料は太る」「ゼロカロリー飲料は健康に悪い」
こうした話を一度は聞いたことがあると思います。
特に減量中やボディメイク中の人にとって、人工甘味料を使っていいのかどうかは気になるところです。プロテイン、ゼロカロリー飲料、カロリーオフ食品、ダイエットゼリーなどにも人工甘味料はよく使われています。
結論から言うと、現時点の研究を見る限り、人工甘味料そのものが体脂肪を増やすとは考えにくいです。
体重や体脂肪を大きく左右する中心は、やはりカロリー収支です。
つまり、摂取カロリーが消費カロリーを上回れば体重は増えやすくなり、摂取カロリーが消費カロリーを下回れば体重は減りやすくなります。
人工甘味料は、このカロリー収支を管理しやすくするための道具として考えると、かなり現実的に使いやすい存在です。
人工甘味料とは何か
人工甘味料とは、砂糖の代わりに食品や飲料へ甘みをつけるために使われる甘味料です。
代表的なものには、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、ネオテームなどがあります。
これらの特徴は、砂糖よりもかなり強い甘みを持つことです。そのため、少量でも十分な甘さを出すことができます。
結果として、砂糖を多く使わずに甘みを出せるため、食品や飲料のカロリーを抑えることができます。
たとえば、ゼロカロリー飲料、カロリーオフのお菓子、ダイエットゼリー、プロテインなどに使われることがあります。
なぜ「人工甘味料は太る」と言われるのか
人工甘味料が太ると言われる理由のひとつに、観察研究があります。
観察研究では、ある集団を調べて、人工甘味料入り飲料をよく飲む人ほど体重が重い、というような関連が見つかることがあります。
ただし、ここで重要なのは、関連があることと原因であることは違う、という点です。
たとえば、人工甘味料入り飲料をよく飲む人に体重が重い人が多かったとしても、それだけで「人工甘味料が太らせた」とは言えません。
体重が気になる人ほど、砂糖入り飲料ではなくゼロカロリー飲料を選んでいる可能性もあります。
つまり、
「人工甘味料を飲んでいるから太っている」
のではなく、
「体重を気にしている人が人工甘味料入り飲料を選んでいる」
という逆の関係かもしれません。
また、体重が重い人ほど全体のカロリー摂取量が多かった場合、体重増加に関係しているのは人工甘味料ではなく、総摂取カロリーや食習慣全体である可能性もあります。
このように、観察研究だけでは、人工甘味料が体重増加の原因だとは判断できません。
人工甘味料を追加すると体重は増えるのか
人工甘味料の影響を考えるうえでは、介入研究を見ることが重要です。
介入研究とは、参加者に実際に何かを摂ってもらい、その結果を比較する研究です。
たとえば、普段の食生活にダイエットコーラを1日1リットル追加するグループと、水を1日1リットル追加するグループを比較した研究があります。
その結果、6ヶ月間で体重や体脂肪の変化に大きな差は見られませんでした。
これは、人工甘味料入り飲料を飲んだからといって、それだけで体重や体脂肪が増えるわけではないことを示しています。
もし人工甘味料がカロリー収支とは無関係に脂肪を増やすのであれば、このような研究でも体重や体脂肪の増加が見られるはずです。
しかし、実際にはそのような結果にはなっていません。
この点から考えると、人工甘味料が直接的に体脂肪を増やす可能性は低いと考えられます。
減量中に人工甘味料を使う意味
減量中に人工甘味料を使うことには、実用的なメリットがあります。
減量では、摂取カロリーを抑える必要があります。しかし、甘いものを完全にやめようとすると、ストレスが大きくなり、継続が難しくなる人もいます。
そこで、人工甘味料入りの食品や飲料を使うことで、甘さを楽しみながらカロリーを抑えることができます。
ある研究では、減量中の参加者を、人工甘味料入り飲料を摂るグループと、水を摂るグループに分けて比較しています。
どちらのグループも、体重が減るようにカロリー摂取量を調整されていました。
その結果、人工甘味料入り飲料を摂ったグループの方が、12週間でより体重が落ち、その後の体重維持も良い結果でした。
ただし、この結果を「人工甘味料を摂れば痩せる」と単純に解釈するのは正確ではありません。
この研究の参加者は、もともと人工甘味料入り飲料を飲む習慣がありました。
そのため、人工甘味料入り飲料のグループは、今までの習慣を大きく変えずに減量を進めることができました。一方で、水のグループは、普段飲んでいたものを水に変える必要がありました。
つまり、人工甘味料そのものが脂肪燃焼を高めたというより、食習慣を無理なく続けられたことが結果に影響した可能性があります。
それでも重要なのは、人工甘味料が減量を邪魔したわけではない、という点です。
むしろ、甘いものを我慢しすぎて反動が出る人にとっては、人工甘味料入りの食品や飲料は減量継続の助けになる可能性があります。
人工甘味料は健康に悪いのか
次に、健康面について考えます。
人工甘味料に限らず、食品や成分の安全性を考えるときに重要なのは「量」です。
どんなものでも、摂りすぎれば問題になります。
水であっても極端に大量に飲めば健康に悪影響が出ます。塩も体に必要なものですが、摂りすぎれば高血圧などのリスクにつながります。
つまり、「人工甘味料だから危険」「天然だから安全」と単純に分けることはできません。
大切なのは、どの成分を、どれくらいの量で、どのくらいの頻度で摂っているのかです。
食品添加物として使われる人工甘味料は、使用が認められる前に安全性が評価されます。
短期的な毒性、長期的な摂取の影響、発がん性、生殖機能への影響、胎児への影響、遺伝子への影響、アレルギー反応など、複数の観点から確認されます。
そのうえで、日常的に摂っても問題が起こりにくいと考えられる範囲が設定されます。
ADIとは何か
人工甘味料の安全性を考えるうえで重要なのが、ADIです。
ADIとは、Acceptable Daily Intakeの略で、日本語では「一日摂取許容量」と呼ばれます。
これは、毎日摂り続けても健康に悪影響が出ないと考えられる1日あたりの摂取量の目安です。
ADIは、動物実験などで悪影響が出なかった最大量をもとに設定されます。
さらに、安全性を考慮して、その量よりかなり低い値が設定されます。一般的には、悪影響が見られなかった量の100分の1を基準にします。
つまり、ADIはギリギリの危険ラインではありません。
かなり余裕を持って設定された、安全側の目安です。
普通の食生活でADIを超えることはあるのか
実際の食生活で、人工甘味料をどれくらい摂っているのかも重要です。
日本人を対象にした調査では、人工甘味料の実際の摂取量はADIに対してかなり少ない量でした。
アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどは、通常の食生活ではADIのごく一部にとどまっています。
つまり、一般的な範囲でゼロカロリー飲料やプロテインを摂っている程度で、ADIを超える可能性はかなり低いと考えられます。
たとえば体重70kgの人が、ADIに近い量を1日で摂ろうとすると、ダイエット飲料を何リットルも飲んだり、ダイエットゼリーを何十個も食べたり、プロテインを何十杯も飲んだりするような、かなり非現実的な量になります。
そのため、普通の使い方をしている限り、人工甘味料を過度に恐れる必要は低いと言えます。
人工甘味料との現実的な付き合い方
人工甘味料は、積極的に大量摂取するものではありません。
しかし、減量や健康管理の中で、うまく使える場面はあります。
たとえば、普段から砂糖入り飲料を飲んでいる人が、ゼロカロリー飲料に置き換えると、摂取カロリーを大きく減らせる可能性があります。
また、減量中に甘いものが欲しくなったとき、カロリーの高いお菓子を食べる代わりに、人工甘味料入りの食品を使うことで、総摂取カロリーを抑えやすくなります。
プロテインに人工甘味料が入っている場合も、通常の摂取量であれば過度に心配する必要は低いでしょう。
むしろ、味が合わずにプロテインを続けられないよりも、自分が飲みやすい味を選んで、必要なたんぱく質を安定して摂れる方が実用的です。
ボディメイク視点での結論
体脂肪を落とすうえで最も重要なのは、人工甘味料を避けることではありません。
重要なのは、総摂取カロリー、たんぱく質量、トレーニング、睡眠、日々の活動量、そして継続性です。
人工甘味料は、この中で「カロリー管理をしやすくする補助ツール」として位置づけるのが現実的です。
もちろん、人工甘味料入り食品ばかりに頼り、食事全体の質が低くなるのは望ましくありません。
野菜、果物、肉、魚、卵、大豆製品、穀類など、栄養価の高い食品を中心にしながら、必要に応じて人工甘味料入りの食品や飲料を使う。
このくらいの距離感が、最もバランスの良い使い方だと思います。
まとめ
人工甘味料を摂ったからといって、それだけで太るわけではありません。
体重や体脂肪を左右する中心は、カロリー収支です。
観察研究では、人工甘味料入り飲料を飲む人ほど体重が重いという関連が見つかることがありますが、それだけでは人工甘味料が太る原因とは言えません。
介入研究を見ると、人工甘味料入り飲料を摂ったことで体重や体脂肪が増えるとは考えにくい結果が出ています。
また、減量中に人工甘味料を使うことで、甘いものへの欲求を抑えながらカロリー管理を続けやすくなる可能性があります。
健康面についても、ADIの範囲内であれば悪影響が出る可能性は低いと考えられます。一般的な食生活でADIを超えるほど摂取することは、かなり考えにくいです。
人工甘味料は「体に良い魔法の成分」ではありません。
しかし、「太る原因」や「必ず避けるべき危険なもの」と考える必要もありません。
減量中やボディメイク中に、甘さを楽しみながらカロリーを管理するための選択肢として、適度に使えば問題ないと考えられます。


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