筋肥大に必要な余剰カロリーは?増量期の適正量を科学的に解説

筋肥大に必要な余剰カロリーと適切な体重増加速度を解説

筋肥大に+500kcalは本当に必要?初心者と上級者の違いや、週0.25〜0.5%の体重増加目安、大きな余剰カロリーが体脂肪を増やす可能性を研究をもとに解説します。

「筋肉を増やすなら、とにかくたくさん食べる」

「増量期ならメンテナンスカロリーに+500kcalくらい必要」

このような話を聞いたことがある人は多いと思います。

しかし、筋肥大に必要な余剰カロリーは、思っているより少ない可能性があります。

特に重要なのが、トレーニング歴です。

筋トレを始めたばかりの初心者と、3年、5年と継続している上級者では、筋肉が増える速度は同じではありません。

筋肉を作れる速度に上限がある以上、余剰カロリーを増やせば増やすほど筋肉が増えるわけでもありません。

実際、レジスタンストレーニング経験者を対象とした研究では、大きなエネルギー余剰によって筋肥大が明確に増加するというより、体脂肪の増加が大きくなる可能性が示されています。

この記事では、筋肥大と余剰カロリーの関係を、生理学と研究の両面から解説します。

目次

筋肥大には余剰カロリーが必要なのか?

結論からいうと、筋肥大を最大化するために必要な正確な余剰カロリーは、現在も確立されていません。

筋肥大のためにエネルギーが必要であることと、「必ず+○○kcal必要」という話は分けて考える必要があります。

Slaterら(2019)のレビューでも、筋肥大を最大化するための最適なエネルギー余剰量を直接示す研究は不足していることが指摘されています。

したがって、

「筋肥大には必ず+500kcal必要」

という数字を、生理学的な必須条件として扱うことは適切ではありません。

一方、筋肉を増やすための環境として、十分なエネルギーを確保すること自体には合理性があります。

筋肉を作るにもエネルギーが必要

筋力トレーニングを行うと、筋肉ではさまざまな細胞内シグナルが活性化し、筋タンパク質合成(MPS)が促進されます。

大まかには、

レジスタンストレーニング

メカニカルテンション

細胞内シグナル伝達

筋タンパク質合成

長期的な筋タンパク質の蓄積

筋肥大

という流れです。

筋タンパク質を合成するためには、アミノ酸という「材料」だけでなく、その過程を進めるためのエネルギーも必要です。

そのため、増量期に十分なタンパク質とエネルギーを確保することは理にかなっています。

ただし、ここで重要なのが、

「筋肉を作るためにエネルギーが必要」=「カロリーを余らせるほど筋肉が増える」ではない

ということです。

余剰カロリーを2倍にしても筋肉が2倍増えるわけではない

仮に+500kcalで筋肉が増えるのであれば、+1,000kcalなら2倍筋肉が増えるのでしょうか?

当然、そのような単純な関係ではありません。

筋肥大の速度は、

  • トレーニング刺激
  • トレーニング歴
  • トレーニングボリューム
  • タンパク質摂取量
  • 遺伝的要因
  • 年齢
  • 睡眠
  • 回復状態
  • エネルギー状態

などによって制限されます。

つまり、身体には筋肉を作れる速度の上限があります。

十分なエネルギーが存在する状態から、さらに大量のエネルギーを追加しても、その分だけ筋タンパク質合成が比例して増加するわけではありません。

余ったエネルギーを筋肉として利用できなければ、その一部は最終的に体脂肪として蓄積されます。

初心者と上級者では筋肉が増える速度が違う

増量を考えるうえで重要なのが、トレーニング歴です。

初心者は、レジスタンストレーニングという刺激にまだ十分適応していません。

そのため、適切なトレーニングを開始すると比較的大きな適応を起こせる可能性があります。

一般的に「初心者ボーナス」と呼ばれる現象です。

しかし、

1年、3年、5年……

と適切なトレーニングを続けていけば、筋肉量や筋力は徐々に自分の潜在的な上限へ近づいていきます。

その結果、新たに筋肉を増やす速度は遅くなっていきます。

したがって、初心者とトレーニング歴5年の人に対して、

「増量だから毎日+500kcal」

と同じ食事戦略を設定する合理性は高くありません。

上級者に+500kcalは多すぎる可能性がある

例えば、メンテナンスカロリーが2,500kcalの人が毎日3,000kcal摂取するとします。

1日の理論上の余剰は500kcalです。

30日では、

500 × 30 = 15,000kcal

の余剰になります。

しかし、トレーニング歴5年の人が、その15,000kcalすべてを新しい筋組織へ変換できるわけではありません。

筋肉を作れる速度そのものが制限されているからです。

筋肥大に利用できる量以上のエネルギーを摂取すれば、余ったエネルギーの一部は体脂肪として蓄積されます。

したがって、

「増量期だから+500kcal」という固定的な考え方ではなく、自分の筋肥大速度に合わせてエネルギー余剰を設定する

という考え方が重要になります。

5%と15%のカロリー余剰を比較した研究

この問題を直接調べた研究として重要なのが、Helmsらが2023年に発表した研究です。

レジスタンストレーニング経験者を、

  • メンテナンスカロリー
  • 約5%のエネルギー余剰
  • 約15%のエネルギー余剰

に分け、8週間のレジスタンストレーニングを実施しました。

研究開始時には21名が無作為化され、COVID-19などの影響もあり、最終的な完遂者は17名でした。

結果として、体重増加速度が大きくなるほど皮下脂肪厚の増加も大きくなる関係が確認されました。

一方、スクワット1RMやベンチプレス1RM、複数部位の筋厚について、大きな余剰カロリーによる一貫した明確な優位性は確認されませんでした。

上腕二頭筋については大きな余剰が有利である可能性を示す結果もありましたが、研究全体としては、

大幅なカロリー余剰は筋肥大を比例して増加させるというより、体脂肪増加を大きくする可能性がある

と解釈できます。

ただし、これは17名・8週間という小規模な研究です。

この研究だけから、

「5%余剰が最適」

「15%余剰は意味がない」

と断定することはできません。

現時点では、筋肥大を最大化するための最適な余剰カロリー量には不確実性が残っています。

筋肥大に適した体重増加速度は週0.25〜0.5%?

増量期の栄養戦略としてよく引用されるのが、Iraki(イラキ)らが2019年に発表したナラティブレビューです。

このレビューでは、オフシーズンのナチュラルボディビルダーについて、

初心者〜中級者ではメンテナンスカロリーに対して約10〜20%のエネルギー余剰を設定し、週あたり体重の約0.25〜0.5%の増加を目標とする

ことが提案されています。

重要なのは、これは「週0.25〜0.5%が筋肥大に最適だと実験によって確立された」という意味ではないことです。

既存研究をもとにした実践的な推奨値です。

さらにIrakiらは、上級者については、カロリー余剰と週あたりの体重増加速度をより保守的に設定することを推奨しています。

トレーニングレベルカロリー余剰の考え方体重増加速度
初心者比較的大きめでも許容される可能性週0.25〜0.5%が提案
中級者状況に応じて抑える週0.25〜0.5%が提案
上級者より保守的さらに遅く設定

※週0.25〜0.5%はIrakiらによる実践的推奨であり、筋肥大の「科学的に確立された最適値」ではありません。

例えば体重75kgなら、

週0.25%:75 × 0.0025 = 約0.19kg/週

週0.5%:75 × 0.005 = 約0.38kg/週

となります。

単純に4週間換算すると、約0.75〜1.5kg/月です。

ただし、トレーニング歴の長い上級者がこの上限まで体重を増やす必要があるとは限りません。

むしろ上級者では、これより遅い体重増加を狙うことで、不要な体脂肪増加を抑えられる可能性があります。

上級者なら+100〜200kcalでも十分なのか?

ここは、研究結果と実践的な推論を明確に分ける必要があります。

例えばメンテナンスカロリーが2,500kcalなら、

余剰率追加カロリー摂取カロリー
5%+125kcal2,625kcal
10%+250kcal2,750kcal
15%+375kcal2,875kcal
20%+500kcal3,000kcal

このように考えると、トレーニング歴が長い人が**+100〜200kcal程度の小さな余剰からスタートする**という方法には一定の合理性があります。

しかし、

「上級者なら+100〜200kcalが科学的に最適である」

という研究結果が確立されているわけではありません。

したがって、実際にはカロリーの数字だけで管理するのではなく、

  • 週平均体重
  • ウエスト
  • 筋肉のサイズ
  • トレーニングパフォーマンス
  • 見た目
  • 体脂肪の増加

などを確認しながら、摂取カロリーを調整する方が現実的です。

余剰カロリーは筋肥大の「スイッチ」ではない

筋肥大について理解するときは、余剰カロリーを筋肥大のスイッチとして考えない方が分かりやすいでしょう。

大まかには、

筋力トレーニング=筋肥大を引き起こす刺激

タンパク質=筋組織を作る材料

エネルギー=その適応を支えるエネルギー

です。

タンパク質については、Mortonらによる49研究・1,863人を対象としたメタ分析で、レジスタンストレーニング中のタンパク質摂取が除脂肪量や筋サイズの増加を促進することが示されています。

一方で、タンパク質摂取量を増やし続ければ、筋肥大効果が無限に大きくなるわけでもありません。

エネルギーについても同じように、

必要量を満たすことと、大量に余らせることは別問題

と考える必要があります。

「たくさん食べる増量」から「必要なだけ食べる増量」へ

増量期の目的は、単純に体重を増やすことではありません。

本当の目的は、

できるだけ筋肉を増やしながら、不要な体脂肪増加を抑えること

です。

例えば上級者が大幅なカロリー余剰を作ると、

大幅な余剰カロリー

体重が速く増える

筋肉も増える可能性がある

しかし体脂肪も大きく増える

長期間の減量が必要になる

年間の増量期間が短くなる

という可能性があります。

一方、

小さなカロリー余剰

ゆっくり体重を増やす

トレーニングパフォーマンスを向上させる

体脂肪増加を抑えながら筋肥大を狙う

長期間増量を続ける

という方法も考えられます。

特にトレーニング歴の長い人ほど、後者のような保守的な増量を検討する価値があります。

まとめ|筋肥大に必要な余剰カロリーは思ったより少ない可能性がある

筋肥大には十分なエネルギーとタンパク質が必要です。

しかし、余剰カロリーを増やせば増やすほど筋肉が増えるわけではありません。

現在の研究から「筋肥大には+○○kcalが最適」と断定できるほどのエビデンスはありません。

Irakiらは初心者〜中級者について、約10〜20%のエネルギー余剰と週0.25〜0.5%程度の体重増加を実践的な目安として提案し、上級者についてはさらに保守的な設定を推奨しています。

また、トレーニング経験者を対象としたHelmsらの研究では、大きなエネルギー余剰は筋肥大や筋力を一貫して大きくするというより、皮下脂肪の増加を大きくする可能性が示されました。

そのため、

初心者とトレーニング歴5年の人が、同じ+500kcalで増量する必要はありません。

特に上級者では、小さな余剰カロリーから開始し、週平均体重・ウエスト・筋サイズ・トレーニングパフォーマンスを見ながら微調整していく方法が合理的です。

春日井市・勝川エリアでボディメイクをしている方も、「増量=とにかく食べる」と考えるのではなく、筋肉を増やしながら余計な体脂肪を増やさない食事管理を意識してみてください。

よくある質問

筋肥大には余剰カロリーが絶対に必要ですか?

必ずしもそうとは言い切れません。特に初心者や体脂肪率が高めの人などでは、メンテナンス付近やエネルギー不足の状態でも筋肥大が起こるケースがあります。

ただし、筋肥大の最大化を狙う場合、十分なエネルギーを確保することは合理的です。

筋肥大には1日+500kcal必要ですか?

+500kcalが生理学的な必須量だという根拠はありません。

トレーニング歴や体格、消費カロリーなどによって適切な余剰量は異なります。

上級者なら+100〜200kcalで十分ですか?

合理的な開始点になる可能性はありますが、+100〜200kcalが最適だと確立されているわけではありません。

実際の体重増加速度などを確認しながら調整する必要があります。

週0.25〜0.5%増やせば筋肥大に最適ですか?

最適値として確立されているわけではありません。

Irakiらが初心者〜中級者のオフシーズンにおける実践的な目安として提案している数値です。上級者では、さらに保守的な増加速度が提案されています。

体重75kgなら週どのくらい増やしますか?

週0.25%なら約190g、週0.5%なら約375gです。

ただし、上級者ではこれより遅く設定することも検討できます。

カロリー余剰を増やせば筋肥大も速くなりますか?

単純な比例関係は確認されていません。

大きな余剰では、筋肥大の上乗せ以上に体脂肪増加が大きくなる可能性があります。

増量中のタンパク質はどのくらい必要ですか?

Irakiらは1.6〜2.2g/kg/日を提案しています。

また、Mortonらのメタ分析では、平均的には約1.6g/kg/日前後で追加的な除脂肪量増加効果が頭打ちになる傾向が報告されています。

増量中は体重だけ見ればいいですか?

体重だけでは筋肉と脂肪を区別できません。

週平均体重、ウエスト、写真、筋サイズ、トレーニングパフォーマンスなどを総合的に確認する方が適切です。

参考文献

  1. Iraki J, Fitschen P, Espinar S, Helms E. Nutrition Recommendations for Bodybuilders in the Off-Season: A Narrative Review. Sports. 2019;7(7):154. doi:10.3390/sports7070154.
  2. Helms ER, Spence AJ, Sousa C, et al. Effect of Small and Large Energy Surpluses on Strength, Muscle, and Skinfold Thickness in Resistance-Trained Individuals: A Parallel Groups Design. Sports Medicine – Open. 2023;9:102. doi:10.1186/s40798-023-00651-y.
  3. Slater GJ, Dieter BP, Marsh DJ, Helms ER, Shaw G, Iraki J. Is an Energy Surplus Required to Maximize Skeletal Muscle Hypertrophy Associated With Resistance Training? Frontiers in Nutrition. 2019;6:131. doi:10.3389/fnut.2019.00131.
  4. Morton RW, Murphy KT, McKellar SR, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine. 2018;52(6):376-384. doi:10.1136/bjsports-2017-097608.

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次