「血糖値が急上昇すると太る」
「血糖値を上げないように食べれば痩せる」
ダイエットについて調べていると、このような説明を目にすることがあります。
確かに、炭水化物を食べると血糖値が上昇し、それに伴ってインスリンが分泌されます。そしてインスリンには、栄養を体内に取り込んだり、脂肪の分解を一時的に抑えたりする働きがあります。
しかし、
「血糖値が急上昇した=体脂肪が増える」
というわけではありません。
体脂肪が増えるか減るかを考えるうえで、より重要なのは「1日や数週間といった長い期間でのエネルギー収支」です。
体脂肪の増減を決める基本はエネルギー収支
人間の体では、
摂取エネルギー > 消費エネルギー
という状態が長期間続けば、余ったエネルギーが体内に蓄積され、体重や体脂肪は増えやすくなります。
反対に、
摂取エネルギー < 消費エネルギー
という状態が続けば、体内に蓄えているエネルギーを利用する必要があるため、体重や体脂肪は減少していきます。
つまり、
体脂肪の増減を見るうえで最も基本になるのは、血糖値の高さではなく、摂取したエネルギーと消費したエネルギーのバランスです。
「インスリンが出ると脂肪が増える」は半分正しく、半分間違い
血糖値が上がると、一般的にインスリンの分泌も増えます。
インスリンには脂肪分解を抑制する作用があるため、
「インスリンが出る」
↓
「脂肪燃焼が止まる」
↓
「太る」
と説明されることがあります。
しかし、ここには重要な点が抜けています。
人間の体では、脂肪の「蓄積」と「分解」が一日中繰り返されています。
食事をすれば、一時的に脂肪の蓄積が優位になります。
食事と食事の間や睡眠中などには、脂肪の分解が増えます。
重要なのは、一瞬の脂肪燃焼量ではありません。
24時間、さらに数日〜数週間単位で見て、脂肪をどれだけ蓄積し、どれだけ利用したのか。
この差によって体脂肪は変化していきます。
そのため、食後に血糖値やインスリンが上昇して脂肪分解が一時的に低下したとしても、そのことだけで「体脂肪が増えた」とは言えません。
同じカロリーなら、血糖値が高く上がる方が太るのか?
ここが最も重要なポイントです。
例えば、1日の消費エネルギーが2,500kcalの人がいるとします。
この人が1日2,000kcal食べていたとします。
食事によって血糖値が多少大きく上昇したとしても、1日のエネルギー収支は、
2,000 − 2,500 = −500kcal
です。
つまり、エネルギー不足の状態です。
このような状態が継続すれば、基本的には体に蓄えられているエネルギーを使わなければなりません。
逆に、血糖値をできるだけ上げない食事をしていても、
摂取エネルギーが3,000kcal
消費エネルギーが2,500kcal
であれば、
+500kcal
のエネルギー余剰になります。
「血糖値を上げなかったから太らない」ということにはなりません。
では、血糖値はダイエットに全く関係ないのか?
ここは誤解しないようにする必要があります。
血糖値がどうでもいい、という意味ではありません。
血糖値や食事内容は、
・空腹感
・満腹感
・食欲
・食事量
・運動時のパフォーマンス
・糖尿病などの代謝疾患
などと関係する可能性があります。
例えば、ある食事方法によって満腹感が長く続き、結果的に摂取カロリーを抑えやすくなるのであれば、ダイエットには有効かもしれません。
ただし、この場合でも、
「血糖値が低かったから脂肪が直接燃えた」
というより、
「食事管理がしやすくなり、結果としてエネルギー収支がマイナスになった」
と考える方が適切です。
炭水化物を食べても痩せることはできる
「炭水化物を食べると血糖値が上がるから、ダイエット中はできるだけ避けた方がいい」
と考える人もいます。
しかし、炭水化物を食べながらでも、摂取エネルギーが適切に管理されていれば体脂肪を減らすことは可能です。
反対に、
低糖質食品
ナッツ
チーズ
肉
オイル
など、血糖値が比較的上昇しにくい食品であっても、摂取エネルギーが多すぎれば体脂肪は増える可能性があります。
「血糖値が上がりにくい食品=太らない食品」
ではありません。
なぜ「血糖値が上がると太る」と言われるのか
理由の一つとして、体の中で起こる短期的な反応と、長期的な体脂肪の変化が混同されていることが考えられます。
炭水化物を食べる
↓
血糖値が上がる
↓
インスリンが増える
↓
脂肪分解が一時的に低下する
ここまでは生理学的に起こり得ます。
しかし、
脂肪分解が一時的に低下する
↓
体脂肪が増える
とは限りません。
その後、食事からエネルギーが入ってこない時間帯には、体脂肪が再び利用されます。
そのため、一部分だけを見るのではなく、1日全体のエネルギーの出入りを見る必要があります。
最新の研究ではどう考えられている?
肥満の原因については、「炭水化物によってインスリンが増えることが肥満の主要な原因である」という、いわゆるCarbohydrate-Insulin Modelも研究されてきました。
しかし、管理された食事研究などでは、このモデルの主要な予測を支持しない結果も報告されています。
現在も肥満の仕組みについて研究や議論は続いており、食欲、脳、ホルモン、食品環境、活動量など、多くの要因がエネルギー摂取・消費に影響します。
そのため、
「カロリーだけ見れば他はすべて無関係」
という意味でもありません。
重要なのは、
最終的な体脂肪の増減にはエネルギー収支が必ず関わっており、血糖値の急上昇だけを見て太る・痩せるを判断することはできない
ということです。
まとめ
「血糖値が急上昇すると脂肪が増える」という話は、かなり単純化された説明です。
血糖値やインスリンは体内の栄養利用に関わっていますが、血糖値が一度大きく上がったからといって、それだけで体脂肪が増えるわけではありません。
体脂肪の増減を見るときに重要なのは、
長期的な摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスです。
ダイエットでは、
「血糖値を絶対に上げない」
ことを目標にするより、
「自分が継続できる食事で、適切な摂取カロリーを維持する」
ことの方が重要です。
血糖値やGI値は、食欲や健康管理を考えるための一つの指標。
しかし、
「血糖値が上がる=太る」
ではありません。
ダイエットでは、一つのホルモンや一回の食事の反応だけを見るのではなく、1日、1週間、1か月という長い期間で体のエネルギーバランスを見ることが大切です。
参考文献
Hall KD. A review of the carbohydrate-insulin model of obesity. European Journal of Clinical Nutrition. 2017.
Hall KD, et al. The energy balance model of obesity: beyond calories in, calories out. American Journal of Clinical Nutrition. 2022.
Flier JS. Moderating “the great debate”: The carbohydrate-insulin vs. the energy balance models of obesity. Cell Metabolism. 2023.
Does the Carbohydrate-Insulin Model Explain Obesity? Evidence from Mechanistic and Clinical Studies: A Critical Review. Current Obesity Reports. 2026.
「血糖値が急上昇すると太る」
「血糖値を上げないように食べれば痩せる」
ダイエットについて調べていると、このような説明を目にすることがあります。
確かに、炭水化物を食べると血糖値が上昇し、それに伴ってインスリンが分泌されます。そしてインスリンには、栄養を体内に取り込んだり、脂肪の分解を一時的に抑えたりする働きがあります。
しかし、
「血糖値が急上昇した=体脂肪が増える」
というわけではありません。
体脂肪が増えるか減るかを考えるうえで、より重要なのは「1日や数週間といった長い期間でのエネルギー収支」です。
体脂肪の増減を決める基本はエネルギー収支
人間の体では、
摂取エネルギー > 消費エネルギー
という状態が長期間続けば、余ったエネルギーが体内に蓄積され、体重や体脂肪は増えやすくなります。
反対に、
摂取エネルギー < 消費エネルギー
という状態が続けば、体内に蓄えているエネルギーを利用する必要があるため、体重や体脂肪は減少していきます。
つまり、
体脂肪の増減を見るうえで最も基本になるのは、血糖値の高さではなく、摂取したエネルギーと消費したエネルギーのバランスです。
「インスリンが出ると脂肪が増える」は半分正しく、半分間違い
血糖値が上がると、一般的にインスリンの分泌も増えます。
インスリンには脂肪分解を抑制する作用があるため、
「インスリンが出る」
↓
「脂肪燃焼が止まる」
↓
「太る」
と説明されることがあります。
しかし、ここには重要な点が抜けています。
人間の体では、脂肪の「蓄積」と「分解」が一日中繰り返されています。
食事をすれば、一時的に脂肪の蓄積が優位になります。
食事と食事の間や睡眠中などには、脂肪の分解が増えます。
重要なのは、一瞬の脂肪燃焼量ではありません。
24時間、さらに数日〜数週間単位で見て、脂肪をどれだけ蓄積し、どれだけ利用したのか。
この差によって体脂肪は変化していきます。
そのため、食後に血糖値やインスリンが上昇して脂肪分解が一時的に低下したとしても、そのことだけで「体脂肪が増えた」とは言えません。
同じカロリーなら、血糖値が高く上がる方が太るのか?
ここが最も重要なポイントです。
例えば、1日の消費エネルギーが2,500kcalの人がいるとします。
この人が1日2,000kcal食べていたとします。
食事によって血糖値が多少大きく上昇したとしても、1日のエネルギー収支は、
2,000 − 2,500 = −500kcal
です。
つまり、エネルギー不足の状態です。
このような状態が継続すれば、基本的には体に蓄えられているエネルギーを使わなければなりません。
逆に、血糖値をできるだけ上げない食事をしていても、
摂取エネルギーが3,000kcal
消費エネルギーが2,500kcal
であれば、
+500kcal
のエネルギー余剰になります。
「血糖値を上げなかったから太らない」ということにはなりません。
では、血糖値はダイエットに全く関係ないのか?
ここは誤解しないようにする必要があります。
血糖値がどうでもいい、という意味ではありません。
血糖値や食事内容は、
・空腹感
・満腹感
・食欲
・食事量
・運動時のパフォーマンス
・糖尿病などの代謝疾患
などと関係する可能性があります。
例えば、ある食事方法によって満腹感が長く続き、結果的に摂取カロリーを抑えやすくなるのであれば、ダイエットには有効かもしれません。
ただし、この場合でも、
「血糖値が低かったから脂肪が直接燃えた」
というより、
「食事管理がしやすくなり、結果としてエネルギー収支がマイナスになった」
と考える方が適切です。
炭水化物を食べても痩せることはできる
「炭水化物を食べると血糖値が上がるから、ダイエット中はできるだけ避けた方がいい」
と考える人もいます。
しかし、炭水化物を食べながらでも、摂取エネルギーが適切に管理されていれば体脂肪を減らすことは可能です。
反対に、
低糖質食品
ナッツ
チーズ
肉
オイル
など、血糖値が比較的上昇しにくい食品であっても、摂取エネルギーが多すぎれば体脂肪は増える可能性があります。
「血糖値が上がりにくい食品=太らない食品」
ではありません。
なぜ「血糖値が上がると太る」と言われるのか
理由の一つとして、体の中で起こる短期的な反応と、長期的な体脂肪の変化が混同されていることが考えられます。
炭水化物を食べる
↓
血糖値が上がる
↓
インスリンが増える
↓
脂肪分解が一時的に低下する
ここまでは生理学的に起こり得ます。
しかし、
脂肪分解が一時的に低下する
↓
体脂肪が増える
とは限りません。
その後、食事からエネルギーが入ってこない時間帯には、体脂肪が再び利用されます。
そのため、一部分だけを見るのではなく、1日全体のエネルギーの出入りを見る必要があります。
最新の研究ではどう考えられている?
肥満の原因については、「炭水化物によってインスリンが増えることが肥満の主要な原因である」という、いわゆるCarbohydrate-Insulin Modelも研究されてきました。
しかし、管理された食事研究などでは、このモデルの主要な予測を支持しない結果も報告されています。
現在も肥満の仕組みについて研究や議論は続いており、食欲、脳、ホルモン、食品環境、活動量など、多くの要因がエネルギー摂取・消費に影響します。
そのため、
「カロリーだけ見れば他はすべて無関係」
という意味でもありません。
重要なのは、
最終的な体脂肪の増減にはエネルギー収支が必ず関わっており、血糖値の急上昇だけを見て太る・痩せるを判断することはできない
ということです。
まとめ
「血糖値が急上昇すると脂肪が増える」という話は、かなり単純化された説明です。
血糖値やインスリンは体内の栄養利用に関わっていますが、血糖値が一度大きく上がったからといって、それだけで体脂肪が増えるわけではありません。
体脂肪の増減を見るときに重要なのは、
長期的な摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスです。
ダイエットでは、
「血糖値を絶対に上げない」
ことを目標にするより、
「自分が継続できる食事で、適切な摂取カロリーを維持する」
ことの方が重要です。
血糖値やGI値は、食欲や健康管理を考えるための一つの指標。
しかし、
「血糖値が上がる=太る」
ではありません。
ダイエットでは、一つのホルモンや一回の食事の反応だけを見るのではなく、1日、1週間、1か月という長い期間で体のエネルギーバランスを見ることが大切です。
参考文献
Hall KD. A review of the carbohydrate-insulin model of obesity. European Journal of Clinical Nutrition. 2017.
Hall KD, et al. The energy balance model of obesity: beyond calories in, calories out. American Journal of Clinical Nutrition. 2022.
Flier JS. Moderating “the great debate”: The carbohydrate-insulin vs. the energy balance models of obesity. Cell Metabolism. 2023.
Does the Carbohydrate-Insulin Model Explain Obesity? Evidence from Mechanistic and Clinical Studies: A Critical Review. Current Obesity Reports. 2026.

